インプラント治療について

インプラント治療について
原文 Dr. Gerald Cohen
- Lutheran Medical Center, Brooklyn, NY インプラント科ディレクター
- Rye Book にて歯科医院を開業
日米人の診療にあたる
歯科治療の歴史は長く、古代エジプトにまでさかのぼります。このことは今に残るファラオの頭骨を見ても明らかです。また、歯根治療については西暦600年マヤ文明においてすでに例があったことが出土した頭骨によって証拠づけられています。これは貝殻の一部が下顎の骨に前歯として埋入されたインプラント治療例で、生存中に外科手術が行われ、かつ成功したことを物語るものですが、現在ではハーバード大学ピーボディー考古学博物館に保存されています。今日、インプラントの素材として使用されるのは、生体適合性に優れているという理由から人工関節にも使用されるチタンです。このチタンは、アレルギー反応や癌細胞の増殖、骨の拒否反応を促すなどの副作用の報告が見られない、人間の体に受け入れやすいとされる素材です。
近代歯学界の先駆者たちもインプラント治療を試みなかったわけではありませんが、信頼性の高い臨床実績を持つ治療法として確立されたのは1960年から80年代に入ってからのことです。インプラント治療の技術が改良された今日では、何本もの歯を失ってしまったという患者さんが、顎の骨に人工歯根を埋め込み義歯を固定するというこの療法で、再び新しい歯をとり戻すことが可能になりました。成功率はきわめて高く、100%であると報告するデータさえあります。もちろん患者さんが抱える問題は一人一人違い、難しい症例があることも確かです。全身疾患を持つ方、ヘビースモーカー、顎の骨の量が十分でない患者さんに対しての成功率は当然低くなります。インプラント治療が自分に適しているかどうかを知るためには、専門にこの治療法のトレーニングを受けた歯科医師とよく相談する必要があります。昨今多くの歯科医師がインプラント治療を手がけますが、この技術を持たない医師もいます。主治医がインプラント治療を行わない場合はこの技術を身につけた医師を紹介してもらい、診察を受けなければなりません。
インプラント治療は従来の補綴物、特にブリッジ、入れ歯に比べかなり優れた点が見られます。まず、歯をすべて失い総入れ歯の使い心地の悪さに悩んでいる方。2本から4本のインプラントを埋入することにより、ずれがちで不安定だった入れ歯を固定させることが出来ます。特に下顎の総入れ歯でお悩みの方はこの治療を受けることによって栄養バランスが整えられ、健康状態が向上し、生活を積極的に楽しめるようになります。次に、歯を1本だけ失なったという方。ブリッジのように周囲の歯を損なってしまうことなく、失った部分を補うことが可能になります。最後に、奥歯を失ってブリッジを固定するための歯が隣接していないという場合にも。部分入れ歯というのは面倒なもので、違和感を感じさせがちなため精神的負担さえ与えてしまうものです。以上のようなケースいずれに対してもインプラント治療は最も効果的な治療法と今日位置づけられています。
インプラント治療のプロセス、および完了までの期間は個々のケースによって異なります。まず最初に、必要とされる検査を歯科医師が行い、インプラント治療を受けられるのかどうかチェックするのが普通です。レントゲンは不可欠ですし、多くの場合CTスキャンも必要とされます。CTスキャンはインプラントが埋入される部位の立体的な把握を可能とします。レントゲン写真は平面的なため詳細な把握に適さない場合があるからです。インプラント治療は外科手術の一種で、いくつかの段階を踏んで行われます。初めに医師は顎骨を覆っている歯肉をわずかに切り開きます。そしてネジのような形をしたインプラントを一本埋入するための穴を骨に丁寧に開けていき、その穴の中にインプラントが正確にかみ合うように埋められます。
この後通常3~6ヶ月間、インプラントが骨と一体化するのを待つための治癒期間が必要です。この間インプラントは歯肉で覆われていて見えません。治癒後インプラントの先端部分に新しい歯を支える支台を連結するのですが、この支台は歯肉を貫通することになります。そして義歯を作るための型をとり、その型に従って作られた新しい歯を装着し固定するというのが最後の段階です。さて、ここまでの説明を読んでみると、どうも治療を受けるのをためらってしまう、という方もあるでしょう。しかし思うほど難しい手術ではありません。手術の痛みは歯を抜く際の痛みとさほど変わりませんし、歯に詰め物をする時と同じように、局部麻酔をかけるだけで出来る治療です。もちろん、入院を必要とし、全身麻酔下のもとに行われる複雑な症例がないわけではありませんが、ほとんどの場合はごく普通に局部麻酔下で行われています。
インプラント治療の最新のテクニックを使えば、歯を抜いた直後、患者さん自身の歯がはえていた穴の中にインプラントを埋入していく方法も現在可能です。さらにそのような何本ものインプラント上にすぐ仮歯を装着していくことも可能です。それから、すべての歯を失ってしまったり、これから歯をすべて抜かなければならないといった患者さんに対しては、インプラント埋入と同時に総入れ歯を装着する例もあります。顎にしっかり固定された義歯を得ることによって、自然の歯に匹敵する機能を持つ歯を再びまたとり戻せたのだ、という安堵感をも同時に得ることが出来るのです。すぐには義歯を装着出来ない場合ももちろんあります。その場合には仮歯を作って装着します。仮歯にも様々なタイプがありますので患者さんと医師がよく相談した上で最善の方法を決めていくことになります。
いずれにしても患者さんご自身が歯科治療に関して正しい知識を持ち、よりよい選択をしていくことが大切です。インプラント治療は歯科治療の最先端をいくテクニックであり、多くの面で従来の療法より臨床的に優れているといえます。歯を失ってしまった方、これから歯を抜かなければならないという方はインプラント治療を一考されるとよいでしょう。
